保坂内科消化器科のブログ

日々学んだことを備忘録として記します。

めまいの診断(開業医において)

現病歴とバイタルサインの異常(血圧、脈拍数など)で中枢性めまいのリスクを評価。
主訴<めまい>患者への問診
(1)「立って歩けますか。立った時、左右どちらか片方にふらついたりはしませんでしたか?」:これは体幹失調、脱力の評価が同時にでき、中枢性めまいの拾い上げに有効。

(2) 失神しそうな感じかどうかを聞く。疾患は、薬物性、起立性低血圧(高齢者ではビタミンB12欠乏症)、脱水、循環器疾患、過換気症候群など。

(3)「じっとしていれば、めまいはやみますか?」:この問いによって臨床で多いBPPVの可能性を評価。さらに1-数秒までの潜時があるのはBPPVのみ。潜時がないBPPVもある。

(4)「どちらの方向ということもなく足元がふらつく、身体がふらふらする、といっためまいですか?」

  高齢者(多因子性)、眼科、耳鼻科、頚椎症、薬物性、脳血管障害の慢性期、

  貧血、脱水、電解質異常

上記に対応する項目(1)から(4)からのなかに、気になるものがあったらチェック

(1)脳血管疾患を疑う状況;MRIの拡散強調像を撮影する

□初発 □突然発症ですぐにピーク □頭痛 □頸部痛(椎骨動脈解離時) □構音障害 □歩行不能・運動失調 □患側の筋緊張低下 □麻痺 □しびれ □メニエール病でない難聴

・10%程度は単独めまいしか呈さないことを忘れない。

*血管危険因子:年齢(高齢)、脳卒中、心房細動、糖尿病、高血圧、脂質異常症の既往、喫煙歴。

(2)心血管系では致死性不整脈が重症度・緊急度ともに高く、次に血圧異常(高血圧、低血圧)、低血糖、貧血など。先ず心電図。必要に応じて、血糖、血算、電解質

  □意識消失 □胸痛 □前失神 □動悸 

(3)BPPV:頭位変換後の潜時は通常2~10秒、持続時間は通常60秒以内が特徴。疲労現象、40歳以降の発症(30歳前後の発症もある)、聴覚症状なしを確認。閉眼足踏み試験ができる(45-270度回旋する)。Dix-Hallpike test。
(4)貧血、脱水、電解質異常などでは、なんとなくふらつくなどの主訴が多いが、時に回転性のめまいを訴える患者もおり、めまいの性状だけで鑑別は困難。
  □1日以上持続

 

回転性?浮動性?

緊張型頭痛(回転性<浮動性)

片頭痛(回転性>浮動性)

てんかん(浮動性)

慢性期脳血管障害(回転性<浮動性)

頚椎疾患(回転性<浮動性)

薬剤性(浮動性)

神経症(浮動性)

軽症末梢性めまい・末梢性めまいの回復期(浮動性)

CTC(CT colonography)における評価

C-RADS (CTColonography Reporting And Data System)

C1→フォロー間隔は5年間.

C1であった患者で平均4.7年のフォロー期間で1例のみが大腸癌の診断を受け、粗発症率0.2/1000人・年であった.

 

C2→フォロー間隔は3年間.

C2病変と判断された93人の患者に対して3-4.6年の間に再度CTCを施行した米国の前向きコホート研究では、3年後に大腸癌 への進展はみられなかった.

 

C3→下部内視鏡による処置.

下部内視鏡検査を受け20mm以下のポリープが見つかった 4619病変を対象とした日本のretrospective studyでは腺腫の癌化率は ≦5mm:0.46%, 6-9mm:3.3%, ≧10mm:28.2%であった.

 

その他E項目については下記を参照。

PubMed Central, TABLE 1: AJR Am J Roentgenol. 2014 Jun; 202(6): 1232–1237. doi: 10.2214/AJR.13.11272

 

「ファンベース (ちくま新書)」を読んで

 

ファンベース (ちくま新書)   佐藤 尚之 著

 

経営についての指南書であるが、リーダーに求められる要件は何かということにも繋がるようにも感じられた。

  • 客の20%がファン、その約20%がコアファン
  • ストーリーを前面に出す
  • 徹底的に人に役に立とうとする精神(価値観)を前面に出す
  • 本業を細部まで見せ、丁寧に紹介する
  • ファンに、ファンであることに自信を持たせる
  • ファンが身内のように働いて、一緒に価値を創造していく

骨粗鬆症の強度を決める要因

骨強度の約70% は骨密度によって説明することができ,残りの30%が骨質によって 規定される .骨質は大きく構造特性材質特性の2つに分けられる。

 構造特性には骨のマクロやミクロの構造,材質特性には骨代謝回転,骨内部の微細な損傷,石灰化の状態,コラーゲンの状態などがあてはまる.

 現在,骨粗鬆症の臨床診断では,二重エネルギー X 線吸収測定法(dual-energy X-ray absorptiometry,DXA)による BMD の測定が標準とされ,精度の高さや低被曝線量等の利点から広く普及しているが ,骨質の評価法についてはまだ十分に確立していない. 構造特性について腰椎 DXA の骨画像を解析して海綿骨微細構造と関連する指標(海綿骨スコア, trabecular bone score,TBS)を求める方法や、皮質骨と海面骨の構成を加味した強度評価法である大腿骨強度評価(HSA)などがある

 材質特性については、AGEs架橋によるコラーゲン架橋の劣化が主体と考えられている。AGEs架橋は、アパタイト配列の異常を生じさせるとともに、弾力性の少ない構造を作るため、微小骨折が生じる。AGEs架橋の程度は、活性酸素の増加、加齢、性ホルモン低下、生活習慣病など、活性酸素に由来する酸化ストレスの要素と、蛋白の新陳代謝の抑制の要素によって決まる。AGEs架橋の代表はペントシジンである。

 性ホルモンは、コラーゲン線維の正常な架橋(共有結合)を促進する。また、酸化ストレスの影響を抑制する。結果として骨質を改善する。

 

骨粗鬆症による骨折リスクの評価

FRAXが有名であるが、骨質劣化が加味されていない。

 

日本人における骨粗鬆症の構成

低骨密度 50% 骨折リスク ×3.6

骨質劣化 30% 骨折リスク ×1.5

混合型  20% 骨折リスク ×7.2

 

骨密度:骨密度は、DXA、CT、HR-pQCTなど、X線ベースで測定される。

危険因子がなければ、YAM≦70%が骨粗鬆症とされるが、実際には多数の骨折患者は<80%に入る。

骨密度は、DXA、CT、HR-pQCTなど、X線ベースで測定される。

骨の吸収マーカーと相関があり、尿中NTx、血中TRAP5bなどがある。

骨の形成マーカーには、血中P1NP、BNPなどがある。

 

骨質劣化の指標

骨質劣化の指標として、DM(HbA1c>7.5%、ロッテルダム コホートから)、CKD(eGFR<60)、腹部大動脈の石灰化が2椎体以上、血中ペントシジン>0.05または尿中ペントシジン>11、血中ホモシステイン>10などがある。精度の高いペントシジン測定は、マーキットM尿ペントシジンであるが、保険適応されない。

脳卒中の内科的アプローチ

O'Donnelらによる脳卒中の危険因子

虚血性脳卒中発症の危険因子:高血圧(寄与度45.2%)、脂質異常症(35.2)、運動不足(29.4)、肥満(26)、喫煙(21.4)、心臓病(8.5)、糖尿病(7.9)。

脳出血発症の危険因子:高血圧(寄与度73.6%)、運動不足(27.6)、肥満(26.1)。

 

脳血管障害を合併する高血圧の治療

https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/104/2/104_232/_pdf

両側頚動脈高度狭窄(高度狭窄とは通常NASCET≧70%)、脳主幹動脈閉塞の場合、下げすぎ注意。ラクナ梗塞、抗血栓薬併用時には更に低いレベル130/80mmHgを目標。

Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、利尿薬にはエビデンスがあるが、β遮断薬は脳血流を低下の懸念。

 

脂質異常症の治療 

高用量スタチン(日本では使用されない用量)の投与は、脳卒中の再発予防に寄与する。しかし、脳出血の既往のある高血圧を有する欧米高齢男性において脳出血の再発を誘発する可能性あり。

日本でのJELISの結果では、低用量スタチン+EPAが脳卒中患者の再発予防に有効。

 

糖尿病の治療

脳卒中予防効果、再発予防効果についてのエビデンスはない。

糖尿病はアテローム血栓脳梗塞の発症率が非糖尿病患者と比較して2倍。血管内皮障害の結果、血管反応性が低下し、脳の微小循環障害を引き起こす結果、皮質・皮質下の萎縮と代謝異常を引き起こす。

 

禁煙

男性では1日20本以上の喫煙は脳梗塞の危険因子。喫煙本数が多いほど脳卒中リスクは高くなる。5-10年後の禁煙により脳卒中リスクは低下。

 

心臓病

心房細動にはアスピリンDAPTではなく、抗凝固薬を。

 

その他のこと:大脳白質病変は脳卒中および認知機能障害の高リスク群。

大脳白質病変のリスク因子:高血圧、Mets,CKD、血中ホモシステイン、喫煙

高血圧の積極的治療を考慮してよい。

 

COPDの治療管理

診断:1秒率<70%(気管支拡張薬吸入後)

病期:予測値に対する1秒量の比率

   Ⅰ期:≧80%

   Ⅱ期:50≦<80%

   Ⅲ期:≦30<50%

   Ⅳ期:<30%

臨床重症度:病期に息切れ等の症状や増悪の頻度を加味して総合的に判断する。

息切れの評価にはmMRCが用いられる。咳・痰は重症度に関わらず症状として見られることがあり、その程度は必ずしも重症度に伴なうものではない。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/101/6/101_1631/_pdf

治療

ACOでなければ、LAMAからの開始が多い。LAMAには増悪予防効果。

末梢気道拡張効果のないLAMA(長時間作用型抗コリン剤)が1秒量を改善するのは、大気道虚脱を防止するから。

LABAの全気道拡張効果のあるLABAには、末梢気道の拡張効果が原因と考えられる低酸素血症あり。

ACOの除外:①変動性(日内、日々、季節)、②40歳以前の喘息の既往、③FeNO>35ppb、④以下の2項目以上

 1)通年性アレルギー性鼻炎合併、2)気道可逆性(FEV1≧12%かつ≧200mL

 3)末梢血好酸球>5%又は>300/μL、4)IgE高値(総IgE又は吸入抗原)

 

 

糖尿病治療薬の臨床効果

厳格な血糖コントロールによって最小血管障害は抑制。大血管障害の抑制効果は証明されてこなかった。長期的に観察した研究で大血管障害の抑制効果がある可能性。

 

DPP-4阻害薬:心血管イベントの抑制効果なし。

SGLT2阻害薬:心血管イベントと腎症の抑制効果。ただし、心血管イベント抑制効果は心血管疾患既往患者に限って証明されている。

GLP-1受容体作動薬:心血管イベントの発症と腎症の進展の抑制効果。

 

血糖コントロールの目標の設定:大まかにはHbA1c<7%。低血糖を惹起しやすい薬剤使用時には0.5-1.0%程度甘めに設定。グリニドは低血糖を惹起しやすい薬剤に分類される場合もされない場合もある。