保坂内科消化器科のブログ

日々学んだことを備忘録として記します。

高抗原量インフルエンザHAワクチン エフルエルダの概要

エフルエルダの基本概要

  • 特徴: HA抗原量を通常比4倍(60 µg/株、合計240 µg)に増量
  • 用法: 筋肉内に 0.7 mL を1回投与
  • 対象: 日本では60才以上.*市町村の補助対象の年齢とは異なる.

参考:米国では65歳以上.ただし18〜64歳の免疫抑制剤を服用する臓器移植患者には選択肢.

📈 免疫原性と実臨床上の効果

  1. 国内第III相試験(60歳以上の日本人 2,095例)
  • 抗体価(GMT): 接種28日後、全4株で2.3〜3.1倍に上昇(標準用量に対し統計学的優越性)
  • 抗体陽転率: エフルエルダ群 74〜82% / 標準用量群 40〜48%
  1. 海外メタアナリシス(65歳以上)
  • 発症リスク: 標準用量に対し 24%相対減少
  • 10シーズン(3,400万例超)データ: 肺炎・インフル関連の入院を 13%減少、死亡を 40%減少

⚠️ 副反応の出現頻度比較(国内第III相試験)

※副反応のほとんどは軽度〜中等度であり、接種後1〜3日以内に自然回復します。

症状分類

副反応の項目

エフルエルダ(高用量)

標準用量ワクチン

症状の特徴

局所症状

(注射部位)

痛み(疼痛)

43.8%

35.1%

最も頻度が高いが、大半が軽度

 

赤み(紅斑)

15.7%

7.9%

標準用量の約2倍の頻度

 

腫れ(腫脹)

14.0%

7.9%

標準用量の約1.8倍の頻度

 

硬さ(硬結)

8.1%

2.5%

触ると硬い状態

全身症状

だるさ(倦怠感)

14.3%

12.0%

一時的なだるさ

 

頭痛

10.4%

8.2%

接種後数日以内にみられる

 

筋肉痛

10.1%

9.2%

わずかに高用量が高い傾向

 

発熱(37.5℃以上)

1.7%

0.9%

国内試験でも発生率は低い



【保坂坂内科消化器科 医療DX推進体制整備加算等に関する掲示】

【保坂坂内科消化器科 医療DX推進体制整備加算に関する掲示】
当院では、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)を通じて、質の高い医療を提供するための体制を整備しております。
  • オンライン請求の実施
    当院では、診療報酬明細書(レセプト)のオンライン請求を行っています。
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    マイナ保険証(マイナンバーカード)の利用を促進し、電子資格確認により取得した診療情報・薬剤情報等を、医師が診察室等で閲覧・活用できる体制を整えています。

 その他,診療報酬明細書を無料で発行いたします.

 

                     保坂内科消化器科

                     山梨県甲府市中央4丁目12-26

                     電話番号 055-233-7241     

貨幣状頭痛

貨幣状頭痛(Nummular Headache)

1. 概念・疫学
定義:頭皮の限局した領域(直径1〜6cmの円形・楕円形)に、境界明瞭な痛みが生じる疾患。三叉神経末梢枝の神経痛的機序が疑われている。
バリエーション:同様の痛みが線状に生じる線状頭痛(Linear headache)も存在する。
疫学:10万人あたり6.4〜9.0人。40代女性に多く、半数に片頭痛,,緊張型頭痛,薬物使用過多による頭痛,一次性穿刺様頭痛などの既往がある。

2. 臨床症状
疼痛の性質:多くは締め付けられるような圧迫性の痛み。その他、刺通、拍動痛、灼熱痛など様々。程度は軽症〜中等度が多い。
部位:頭頂部が最多。疼痛範囲の大きさと形は一定(1〜6cm)だが、複数箇所に生じたり移動したりすることもある。

身体所見
圧痛・アロディニア:患部を押すと痛む(圧痛)、あるいは軽く触れただけで痛む(アロディニア)を伴う。
感覚異常:患部の感覚鈍麻、チクチクするような感覚異常を56〜70%に認める。
随伴症状:悪心・光過敏を伴う例はあるが、自律神経症状(結膜充血、流涙、鼻汁など)は原則伴わない。

3. 経過と鑑別
経過:数秒〜数日間と多様。約2/3が慢性(3カ月以上)に経過し、1/3が発作性。
鑑別(一次性穿刺様頭痛):数秒以内の鋭い痛み。貨幣状頭痛との最大の違いは、間欠期に背景痛や感覚異常(圧痛など)を認めない点にある。

4. 治療
第一選択:NSAIDsの投与。
その他:局所麻酔薬による神経ブロック、A型ボツリヌス毒素(海外)など。

口腔内マイクロバイオームと疾患との関連

口腔内マイクロバイオームと疾患との関連

1. 口腔疾患との関連
① う蝕(齲歯):糖の頻回摂取に伴う酸産生菌(例:Streptococcus mutans など)の優勢化とpH低下により、エナメル質の脱灰が進行する多因子疾患として理解されている。
② 歯周病:Porphyromonas gingivalis、Tannerella forsythia、Treponema denticola (この3つの細菌はred complexと呼ばれる) 等を中心としたディスバイオーシスが、慢性炎症と組織破壊に関与するモデルが提唱されている。

2. 全身疾患との関連
糖尿病、関節リウマチ、心血管疾患、早産、低体重児出産等との関連が報告されている。特に、炎症性腸疾患や大腸がん患者の病巣から口腔由来菌(例:Fusobacterium nucleatum)が高頻度に検出されるなど、口腔内マイクロバイオームと腸内マイクロバイオームの相互作用(口腔ー腸管軸)が注目されている。

3. 神経変性疾患との関連
アルツハイマー型認知症患者の脳組織から Porphyromonas gingivalis と、その毒性プロテアーゼであるジンジパイン(gingipain)が検出されている。動物モデルにおいて、同菌の感染がアミロイドβの沈着や神経変性を促進することも報告されている。

遺伝性膵がん症候群と家族性膵がん

遺伝性膵がん症候群(遺伝性膵癌症候群)とは、特定の遺伝子の変異(病的バリアント)が原因で、生涯のうちに膵臓がんを発症するリスクが高くなる疾患の総称です。 

これらは家系内で膵がんが多発する「家族性膵がん」の原因となることがあり、膵がん全体の約5〜10%がこうした遺伝的背景を持つとされています。 



主な遺伝性膵がん症候群と原因遺伝子

膵がんリスクを高める代表的な疾患には以下のようなものがあります。

 

遺伝性乳がん卵巣がん症候群 (HBOC):  BRCA1/2遺伝子の変異により、乳がんや卵巣がんだけでなく膵がんのリスクも高まります。

 

ポイツ・ジェガース症候群 (PJS):  STK11遺伝子の変異が原因で、口唇などの色素沈着や消化管ポリポーシスを特徴とし、膵がんリスクが非常に高い(相対危険度 132倍)とされています。

 

遺伝性膵炎: PRSS1 遺伝子などの変異により幼少期から慢性膵炎を繰り返し、将来的な膵がん発症リスクが上昇します。

 

リンチ症候群:などの遺伝子変異により、大腸がん、子宮体がん、膵がんなどの発症リスクが高まります。

 

家族性異型多発母斑状黒色腫 (FAMMM) 症候群: 

 遺伝子の変異により、皮膚の黒色腫(メラノーマ)と共に膵がんのリスクが増大します。 



家族性膵がん

「家族性膵がん(Familial Pancreatic Cancer: FPC)」は、先ほど挙げた特定の遺伝性症候群(HBOCやリンチ症候群など)とは別に、「原因となる遺伝子は特定されていないが、家系内に膵がん患者が複数いる状態」を指すことが多い言葉です。

 

具体的には、一般的に以下の定義に当てはまる場合を指します。

  1. 定義

「第1度近親者(親・兄弟・子)の中に、2人以上の膵がん患者がいる家系」に発症した膵がん。

 

  1. リスクの強さ

家系内の患者数が増えるほど、未発症の家族が将来膵がんになるリスク(累積発症リスク)は高くなります。 

第1度近親者に1人:約2倍

第1度近親者に2人:約6倍

第1度近親者に3人以上:約32倍

(※一般人口との比較) 

 

  1. 特徴と注意点

生活習慣の共有: 遺伝だけでなく、喫煙習慣や食生活など、家族で共有している生活環境も発症に関与していると考えられています。





早期発見のためのプロトコール

 

家族性膵がんや遺伝性膵がん症候群のリスクがある方に対しては、世界的なガイドライン(CAPS: Cancer of the Pancreas Screening)に基づいた早期発見のための監視(サーベイランス)プロトコールが確立されつつあります。

 

対象者

遺伝性症候群: (家族歴あり)、(リンチ症候群)などの変異保持者。

高リスク疾患: ポイツ・ジェガース症候群(変異)や遺伝性膵炎(変異)の保持者。

家族性膵がん家系: 第1度近親者に2人以上の膵がん患者がいる。

 

開始時期と頻度

開始年齢: 一般的に50歳、または家系内での最短発症年齢より10歳若い年齢から開始します。

※ポイツ・ジェガース症候群など、より若年(35歳)からの開始が推奨されるケースもあります。

 

リスク別の開始年齢(CAPSガイドラインに基づく目安)

対象者の条件 

推奨開始年齢

家族性膵がん家系(既知の遺伝子変異なし)

50歳、または家系の最短発症者より10歳若く

CDKN2A 遺伝子変異保持者

40歳、または家系の最短発症者より10歳若く

STK11 遺伝子変異(ポイツ・ジェガース症候群)

40歳(一部の研究や指針では30〜35歳)

PRSS1 遺伝子変異(遺伝性膵炎)

40歳、または膵炎発症から20年後のいずれか早い方

BRCA1/2

かつ膵がんの家族歴がある場合


 PALB2, ATM(遺伝性膵がん/遺伝性乳がん) 

かつ膵がんの家族歴がある場合

 

MLH1/MSH2/MLH1/ MSH6/PMS2/EPCAM 等のLynch症候群に見られる変異

かつ膵がんの家族歴がある場合

45〜50歳または家系の最短発症者より10歳若く

 

45〜50歳または家系の最短発症者より10歳若く

 

45〜50歳または家系の最短発症者より10歳若く

補足事項

高リスク群において新規に糖尿病を発症した場合,年齢にかかわらずスクリーニングを開始することが検討されます。

 

検査頻度:

異常がなければ12ヶ月ごと。

新規にに糖尿病を発症したりコントロールが増悪した場合,スクリーニング間隔の短縮が検討されます。また,検査で何らかの所見(小さな嚢胞や膵管の拡張)が見つかった場合は、3〜6ヶ月に短縮されます。

 

検査項目

膵がんは通常の人間ドックの腹部エコーでは見落とされやすいため、以下の精度の高い検査を組み合わせて行います。

MRI / MRCP: 膵管の状態や小さな腫瘍を磁気で詳細に確認します(放射線被曝がありません)。

超音波内視鏡 (EUS): 口から内視鏡を入れ、胃や十二指腸の中から膵臓を至近距離で観察します。数ミリ単位の微小ながんを見つけるのに最も適した検査です。

 

血液検査 (腫瘍マーカー): CA19-9などを測定しますが、早期発見には補助的に用いられます。

 

国内での実施状況

日本国内では、これらの国際基準を参考にしつつ、日本膵臓学会の家族性膵癌登録制度などを通じて専門施設でのサーベイランスが行われています。日本膵臓学会の「家族性膵癌登録制度」に登録することで、専門的な診療や、最新の研究段階の検査を受けられる体制が整っています。

臨床研究「Diamond Study」は、日本膵臓学会の「家族性膵癌登録制度」に基づいた多施設共同の前向き介入研究です。1年ごとにEUSとMRI/MRCPを行うのではなく,初回にMRI/MRCPとEUSの両方を行い,その後にEUSとMRI/MRCPを6ヶ月ごとに交互に行うサーベイランスを推進しています。

拍動性耳鳴り

拍動性耳鳴の鑑別と対応

 

非血管性(筋肉・管腔由来)

耳自体の病変や筋肉の動きに関連するもの

耳管開放症

  • 症状: 自分の呼吸音が響く(自声強聴)、耳閉感。
  • 注意: 患者が「心臓の音がする」と表現し、拍動性と混同されることがある。
  • 筋性耳鳴(中耳・口蓋ミオクローヌス)
    • 症状: 「カチカチ」という規則的なクリック音。
    • 所見: 口蓋ミオクローヌスでは軟口蓋の不随意運動を伴い、音が非常に大きく周囲にも聞こえることがある。
  1. 拍動性耳鳴(血管由来)

血流の乱流(約70%)や血管病変に起因します。眼症状の有無が緊急度判定の鍵です。

  • A. 鼓膜所見を伴うもの
    • グロームス腫瘍: 鼓膜の背側に赤い拍動性腫瘤が見える。
  • B. 鼓膜所見のないもの(深部血管の異常)
    • 静脈性: 高位S状静脈洞(解剖学的変異)、頸静脈球憩室。
    • 動脈性: 内頸動脈等の狭窄、解離、走行異常、動脈瘤。
  • C. 【最重要・レッドフラッグ】動静脈瘻(dAVF / CCF)
    • 疾患: 硬膜動静脈瘻(dAVF)、頸動脈海綿静脈洞瘻(CCF)。
    • 特徴: 拍動性耳鳴 + 眼症状(結膜充血、眼球突出、浮腫、複視)。
    • リスク: 放置すると脳出血や失明の危険がある。
  1. 血管性耳鳴を疑い画像検査をチェックするポイント(MRA/MRI)
  • MRA(3D-TOF): 海綿静脈洞が早期に白く描出されていないか(シャントの示唆)。
  • MRI: 上眼静脈(SOV)の拡張、外眼筋の腫大、Flow void(異常血管)の有無。
  1. 専門医紹介のタイミング
  • 脳神経外科へ(緊急): 外傷後の急激な発症、激しい頭痛、視力低下、眼球突出を伴う場合。
  • 脳神経外科・眼科へ: 点眼で治らない結膜充血に拍動性耳鳴が伴う場合。
  • 耳鼻咽喉科へ: 鼓膜に異常所見がある、または難聴やめまいを伴う場合。

肥満低換気症候群

肥満低換気症候群(OHS)は、高度肥満(BMI 30kg/m²以上)に日中の高二酸化炭素血症(PaCO₂ 45mmHg以上)を伴い、重症の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)を合併することが多い予後不良な病態である。
治療は減量と並行し、持続陽圧呼吸療法(CPAP)を第一選択として行う。CPAPはPaCO₂の改善や生活の質(QOL)の向上に寄与する。ただし、CPAPの継続が困難な場合や、高圧設定による不快感、低換気・低酸素血症が改善しないなど治療効果が不十分な場合は、bilevel PAP(NPPV)への切り替えを検討する。
主な注意点:
  • 高い設定圧の必要性: OHS患者は通常のOSAS患者よりも高い圧を必要とする傾向がある。リーク(空気漏れ)を防ぐため、顎固定帯(チンストラップ)を併用するなど、適切な装着状態を確保した上で治療効果を判定する必要がある。
  • 専門機関との連携: 肥満を伴うOSASに対してCPAPの効果が乏しい場合はOHSの合併を疑う。診断には動脈血ガス分析や経皮的二酸化炭素分圧(TcPCO₂)の測定が不可欠であり、一般クリニックでの対応は困難な場合が多い。
  • 予後の管理: OHSは通常のOSASと比較して心血管合併症による死亡率が高い。そのため、速やかに専門医療機関を紹介し、適切な診療を受けることが望ましい。