保坂内科消化器科のブログ

日々学んだことを備忘録として記します。

高血圧治療ガイドライン2019案

血圧区分案:単位mmHg

        収縮期血圧      拡張期血圧

正常血圧    <120    かつ   <80  

正常高値血圧  120-129   かつ   <80

高値血圧    130-139  かつ/または 80-89

Ⅰ度高血圧   140-159  かつ/または 90-99

Ⅱ度高血圧   160-179  かつ/または 100-109

Ⅲ度高血圧   ≧180   かつ/または ≧110

収縮期高血圧  ≧140    かつ   <90



降圧目標案:単位mmHg

一般成人 75歳未満 <130/80

一般成人 75歳以上 <140/90

糖尿病患者     <130/80

CKD 蛋白尿+   <130/80

CKD 蛋白尿-   <140/90

冠動脈疾患     <130/80

脳血管障害患者   

 両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈狭窄がない場合 <130/80

 それ以外                 <140/90

 

メタボリック症候群と身体活動

厚生労働省e‐ヘルスネットから

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise 参照

減量・内臓脂肪の観点から:

  • 個人にとって多くのエネルギー消費量を確保できる運動であれば、どのような方法でも良い。運動の種類には関係ない。
  • 臨床成績を総合すると、週当たり10メッツ・時以上の運動が有意に内臓脂肪量を減少させる。しかし、それ以下の運動量であっても内臓脂肪は減少する。

高血圧の観点から:

  • ややきつい中等度の強度の有酸素運動を、毎日定期的に30分以上行うことが一般的に勧められている。
  • また10分以上の運動であれば合計して1日30分以上としてもよい。
  • 複数の研究の結果、長期的な身体活動により高血圧患者では収縮期血圧を7.4mmHg、拡張期血圧を5.8mmHg低下させる効果がある。

脂質異常症の観点から

  • ややきつい中等度の強度の運動(最大酸素摂取量の約50%)を、できれば毎日、少なくとも週3日以上、運動量は30分以上行う。
  • 血中脂質レベルに好影響を与えるには数ヶ月以上が必要。
  • HDLコレステロール増加のためには、1週間に合計120分間または合計900Kcalを消費する身体活動が必要。

糖尿病の観点から

  • ややきつい中等度の運動(心拍数100-120回/分、最大酸素摂取量の40-60%)の有酸素運動を、できれば毎日、少なくとも週に3~5回、20~60分行うのが一般的。
  • 運動の開始初期には、エネルギー源として主に筋グリコーゲンが利用されるが、運動開始10分後以降では血中の糖、15分後以降では遊離脂肪酸も利用するため、1回の運動継続時間は20分以上が必要。
  • 運動後約12-72時間の間、糖の処理能力が高まるので、運動はできれば毎日、少なくとも1週間のうち3日以上行う。
  • 食後1時間後に行うと食後の高血糖状態が抑制されると考えられている。
  • 最近の研究では、1週間に合計150分以上の運動を行うと効果的といわれている。

特定健康診査の判定値

特定健診の判定値としての記載に、保健指導判定値と受診勧奨判定値がある。さらに、文例集があり、具体的な指示についての記載がある。人間ドックが特定健診を含む内容で行われることも多く、今後この値を参考に指導がなされることが多くなると思われる。ただし、「改善がなければ」という記載があり、結局、改善しているかどうかの判定のために医療機関の受診が必要になるケースが多いと思われる。

 

       保健指導判定値 受診勧奨判定値     すぐに受診

      (生活習慣指導)(生活習慣指導、改善なければ受診)

収縮期血圧   130        140         160

(mmHg)  

拡張期血圧    85          90          100

LDL      120        140          180

中性脂肪    150                             300                                 500

 

参照サイト

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/seikatsu/dl/hoken-program2_07.pdf

細菌感染症と検査所見

細菌感染とマクロファージ

細菌が体内に侵入すると、最初にマクロファージが反応し、細菌を貪食する。

活性化したマクロファージは、好中球遊走刺激因子とIL-6を産生する。IL-6は肝臓においてCRPの産生を促し、4-6時間でCRPの産生が開始され、8時間ごとに倍増する。CRP半減期は19時間である。

細菌感染と好中球

活性化したマクロファージからの好中球遊走因子に反応して血中を流れている好中球が感染巣に遊走し、細菌を貪食する。血中の好中球が不足すると、脾臓・肝臓・肺の毛細血管壁に付着している滞留プールの分葉核球が血中に動員される。それでも不足する場合には、骨髄プールの好中球が動員される。それでも不足するときには骨髄が産生を亢進する。この動員までに12-24時間かかる。

桿状核球の割合と白血球数によって、好中球産生量を推定できる。生体が感染が適切に制御されている場合、桿状核球数が好中球消費量を表しているとみなされる。日本では桿状核数の割合は、15%を増加の基準値とすることが多い。好中球が増加していると言うことは生体が十分好中球を供給していることを示す。逆に少ないと言うことは十分に供給できていない可能性を示唆する。

桿状核球は自動血球計数器で桿状核球と分葉核球を区別することはできず、目視による確認が必要である。

細菌感染症の検査所見:多くは左方移動の程度が大きく、CRPが15を超える。細菌感染症以外で左方移動を示す疾患には、大量出血(CRPは軽度の上昇)、重症ウイルス感染症(血管内皮障害によって好中球が毛細血管壁に付着、CRPは軽度の上昇)などがある。

一方、左方移動を示さない重症細菌感染症:感染性心内膜炎、細菌性髄膜炎、膿瘍があり、注意を要する。感染性心内膜炎を最近量が少ないため、血流プールの好中球で対処できるため。細菌性髄膜炎及び膿瘍では、血中の好中球が感染巣に移行できないため。

細菌感染に伴う敗血症では凝固の亢進が生じるため、血小板が減少し、フィブリノーゲンも減少する。いずれにしても、時系列でデータを捉えることが大切である。





バロキサビルについて

バロキサビル(ゾフルーザ)

新規の抗インフルエンザ薬。宿主細胞のmRNAの前駆体とウイルスのRNP複合体が結合してウイルスmRNAを合成するポイントを阻害。このウイルスのRNP複合体は、インフルエンザ特有のものである。ウイルスゲノムのRNAの複製阻害には関与しない。

 

平熱に回復するまでの時間を、プラセボで中央値42.0時間を24.5時間に短縮し。

インフルエンザ罹患期間をプラセボ群80.2時間に対し、ゾフルーザは53.7時間に短縮。

NA阻害薬の中でもっともウイルス残存時間がもっとも短いとされるペラミビルにバロキサビル使用時のウイルス残存時間は匹敵。

インフルエンザのウイルス排出停止までの時間をオセタミビル中央値72.0時間に対して 24.0時間に短縮。

バロキサビルの主な副作用:下痢1.3%

バロキサビル投与により変異ウイルスの選択が起こり、138F/T/M変異のウイルス患者において、中央値感染後5日において最も増加するが、その後の増殖能力が維持するために必要な他の変異が起こらないため、自然に消滅する。いずれにしても、感受性低下株に分類されるもので、耐性株ではない。また、この感受性低下株において、感受性株と比較して、インフルエンザ症状の消失期間と有熱期間において、大きな差はない。

動物実験の段階であるがH5N1やH7N9といった鳥インフルエンザウイルスや、従来の治療薬に耐性を持ったウイルスへの効果が認められている。

 

 

抗ウイルス薬によってウイルス残存時間が短くなった場合、それによるHI抗体価の上昇は低い傾向にあるが、それでも免疫獲得に寄与する。

過去の感染既往、および家族の感染既往は、ワクチン接種後のHI抗体価の上昇に対して良好に影響。

HI抗体価0倍と40倍とを比較するとウイルス残存期間は後者のほうが24時間位短い。

従って、バロキサビル投与によってウイルス消失期間が短縮されたからといって、ウイルスに対する免疫獲得が減弱されるということはない。

ウイルス残存時間が短いペラミビルは家族内感染率がNA阻害薬の中で最も低いことから推測すると、バロキサビルも同様なウイルス力価の低下を認めることから、家族内感染が効果的に低下させることが期待される。

骨粗鬆症と動脈硬化の関連

 骨の吸収によりカルシウムやリンの放出が増加すると、血中のリン負荷も増大する。リン放出はパルス状に変化するので血中へのリン負荷の影響は強く、骨代謝回転亢進と死亡率上昇の主因と考えれられている。

 血中のリン増加によって、血管内皮障害が生じ、血管壁の構成細胞である血管平滑筋細胞を骨芽細胞様の形質に脱分化させ、血管壁内に骨に類似した構造を有する石灰化部を形成させる。リンそのものは、NO産生抑制、活性酸素産生促進、炎症惹起作用等を介して、血管内皮細胞障害も起こす。

 閉経後骨粗鬆症患者に対してリセドロネートを投与して、baPWVの進展が抑制されたとの報告がある。

めまいの診断(開業医において)

現病歴とバイタルサインの異常(血圧、脈拍数など)で中枢性めまいのリスクを評価。
主訴<めまい>患者への問診
(1)「立って歩けますか。立った時、左右どちらか片方にふらついたりはしませんでしたか?」:これは体幹失調、脱力の評価が同時にでき、中枢性めまいの拾い上げに有効。

(2) 失神しそうな感じかどうかを聞く。疾患は、薬物性、起立性低血圧(高齢者ではビタミンB12欠乏症)、脱水、循環器疾患、過換気症候群など。

(3)「じっとしていれば、めまいはやみますか?」:この問いによって臨床で多いBPPVの可能性を評価。さらに1-数秒までの潜時があるのはBPPVのみ。潜時がないBPPVもある。

(4)「どちらの方向ということもなく足元がふらつく、身体がふらふらする、といっためまいですか?」

  高齢者(多因子性)、眼科、耳鼻科、頚椎症、薬物性、脳血管障害の慢性期、

  貧血、脱水、電解質異常

上記に対応する項目(1)から(4)からのなかに、気になるものがあったらチェック

(1)脳血管疾患を疑う状況;MRIの拡散強調像を撮影する

□初発 □突然発症ですぐにピーク □頭痛 □頸部痛(椎骨動脈解離時) □構音障害 □歩行不能・運動失調 □患側の筋緊張低下 □麻痺 □しびれ □メニエール病でない難聴

・10%程度は単独めまいしか呈さないことを忘れない。

*血管危険因子:年齢(高齢)、脳卒中、心房細動、糖尿病、高血圧、脂質異常症の既往、喫煙歴。

(2)心血管系では致死性不整脈が重症度・緊急度ともに高く、次に血圧異常(高血圧、低血圧)、低血糖、貧血など。先ず心電図。必要に応じて、血糖、血算、電解質

  □意識消失 □胸痛 □前失神 □動悸 

(3)BPPV:頭位変換後の潜時は通常2~10秒、持続時間は通常60秒以内が特徴。疲労現象、40歳以降の発症(30歳前後の発症もある)、聴覚症状なしを確認。閉眼足踏み試験ができる(45-270度回旋する)。Dix-Hallpike test。
(4)貧血、脱水、電解質異常などでは、なんとなくふらつくなどの主訴が多いが、時に回転性のめまいを訴える患者もおり、めまいの性状だけで鑑別は困難。
  □1日以上持続

 

回転性?浮動性?

緊張型頭痛(回転性<浮動性)

片頭痛(回転性>浮動性)

てんかん(浮動性)

慢性期脳血管障害(回転性<浮動性)

頚椎疾患(回転性<浮動性)

薬剤性(浮動性)

神経症(浮動性)

軽症末梢性めまい・末梢性めまいの回復期(浮動性)