保坂内科消化器科のブログ

日々学んだことを備忘録として記します。

バロキサビルについて

バロキサビル(ゾフルーザ)

新規の抗インフルエンザ薬。宿主細胞のmRNAの前駆体とウイルスのRNP複合体が結合してウイルスmRNAを合成するポイントを阻害。このウイルスのRNP複合体は、インフルエンザ特有のものである。ウイルスゲノムのRNAの複製阻害には関与しない。

 

平熱に回復するまでの時間を、プラセボで中央値42.0時間を24.5時間に短縮し。

インフルエンザ罹患期間をプラセボ群80.2時間に対し、ゾフルーザは53.7時間に短縮。

NA阻害薬の中でもっともウイルス残存時間がもっとも短いとされるペラミビルにバロキサビル使用時のウイルス残存時間は匹敵。

インフルエンザのウイルス排出停止までの時間をオセタミビル中央値72.0時間に対して 24.0時間に短縮。

バロキサビルの主な副作用:下痢1.3%

バロキサビル投与により変異ウイルスの選択が起こり、138F/T/M変異のウイルス患者において、中央値感染後5日において最も増加するが、その後の増殖能力が維持するために必要な他の変異が起こらないため、自然に消滅する。いずれにしても、感受性低下株に分類されるもので、耐性株ではない。また、この感受性低下株において、感受性株と比較して、インフルエンザ症状の消失期間と有熱期間において、大きな差はない。

動物実験の段階であるがH5N1やH7N9といった鳥インフルエンザウイルスや、従来の治療薬に耐性を持ったウイルスへの効果が認められている。

 

 

抗ウイルス薬によってウイルス残存時間が短くなった場合、それによるHI抗体価の上昇は低い傾向にあるが、それでも免疫獲得に寄与する。

過去の感染既往、および家族の感染既往は、ワクチン接種後のHI抗体価の上昇に対して良好に影響。

HI抗体価0倍と40倍とを比較するとウイルス残存期間は後者のほうが24時間位短い。

従って、バロキサビル投与によってウイルス消失期間が短縮されたからといって、ウイルスに対する免疫獲得が減弱されるということはない。

ウイルス残存時間が短いペラミビルは家族内感染率がNA阻害薬の中で最も低いことから推測すると、バロキサビルも同様なウイルス力価の低下を認めることから、家族内感染が効果的に低下させることが期待される。