保坂内科消化器科のブログ

日々学んだことを備忘録として記します。

大動脈瘤について知っておくべきこと

最大短径

局所的拡張の長径が正常径の1.5倍を超えたものを大動脈瘤という。

瘤のサイズはCTで測定し最大短径を用いる。

蛇行は、上下方向への拡張を反映している。蛇行を瘤の短径の拡張としてとらない様に注意する。

 

胸部大動脈    正常範囲3cm以下→大動脈瘤の短径は4.5cm以上

ただし、弓部大動脈や下行大動脈は4cmが正常径。

腹部大動脈    正常範囲2cm以下→大動脈瘤の短径は3cm以上

成因

多くは動脈硬化

その他:感染性、炎症性、外傷性、解離性、Marfan症候群など

リスクファクター:高齢、男性、喫煙、高血圧、家族歴

症状

大多数は無症候性であり、CTやエコー検査で偶然発見される。

①瘤破裂による疼痛:腹痛、腰痛

②周囲臓器への圧迫症状:胸部では嗄声反回神経麻痺)、血痰(肺・気管支圧迫)、嚥下障害(食道圧迫)、腹部膨満感、便通障害、腹痛、下肢浮腫、消化管出血(瘻孔形成)。

③分枝血管の循環障害による臓器虚血症状:解離や血栓閉塞が原因となる。頭頸部の動脈では意識障害、冠動脈では胸痛、指趾の動脈では疼痛、腹腔動脈や腸間膜動脈では腹痛等。

治療

【外科的治療の適応】

5.5-6cm以上で破裂の可能性が高くなる。

手術時の早期死亡率5%として、短径>50mmがまたは5mm増加/年以上が手術。

単純CTで大動脈周囲の高吸収域の存在は破裂、切迫破裂の重要で早期治療。

吻合部仮性瘤や嚢状瘤の場合には大きさに関わらず早期治療。

マルファン症候群のような遺伝的大動脈疾患、先天性二尖弁、大動脈縮窄症の合併例では45mm以上で侵襲的治療も考慮する。

嗄声出現時、背部痛出現時には早急な対応をする。

 

胸部大動脈瘤破裂リスク

<40mm 0%

40-49mm 0-1.4%/年

50-59mm 4.3-16%/年

>60mm  10%-/年

 

AAA(aortic abdominal aneurysm)について

最近のメタ解析によると破裂リスクが過大に評価されていた可能性がある。United Kingdom Small Aneurysm Trialでは5.5cm未満のAAAに早期に手術を行うメリットは否定された。日本では男性5cm以上、女性は破裂リスクが高いため、4.5cm程度で治療が推奨される。

 

【外科における画像フォロー】

単純CTもしくは超音波。CTが客観性が高い。通常半年に1回。

無症状でCTで大動脈径<45mmであれば、半年後のCT再検査。拡大なければ1年後フォロー。無症状で45-55mmの場合、女性、高血圧症、喫煙、慢性閉塞性肺疾患、大動脈瘤の家族歴を認めるものは破裂の危険性が高いことを考慮して手術適応を検討する。

 

【内科から外科への紹介のタイミング】

破裂のリスクの高い5.5-6cmから1cm程度小さい時期に外科に相談するのが妥当であろう。上行大動脈瘤≧4.5cm、弓部・下行大動脈≧5cm、腹部動脈≧4.5cmがこれに相当する。

 

瘤径の拡大ともに瘤径の拡大の速度も速くなる。5mm以上の拡張を認めた場合、破裂の危険性が高いとされる。大動脈瘤の一般的な拡大率は胸部で1-2mm/年、腹部で年3-4mm/年。

 

【内科治療】

日常生活:血圧180mmHgを超えない程度の運動にとどめ、無酸素運動は避ける。

禁煙:血圧以上に重要かもしれない

血圧≦130mmHg:動脈硬化性の胸部大動脈瘤に対してはβ遮断薬、腹部大動脈瘤に対してはACEi。マルファン症候群にともなうものについては、β遮断薬もしくはARB(イルベサルタン)。

動脈硬化性ものについては、スタチン。

弱毒菌対策:TC系、マクロライド系の小規模臨床研究のみ。