保坂内科消化器科のブログ

日々学んだことを備忘録として記します。

潰瘍性大腸炎におけるヒトサイトメガロウイルス感染症の診断と治療

ステロイドを含む2剤以上の免疫抑制剤使用に治療抵抗性を示す症例はヒトサイトメガロウイルス(HCMV)感染リスクが高い。

免疫学的検査:約60-70%の正常健康人がキャリアーである。一般に、HCMV再活性化が生じた患者においては、HCMV-IgGの変化はほとんど認められない、抗体測定はHCMV未感染患者のスクリーニングには有用であると思われるが、HCMVキャリアーからの再活性化の評価には有用ではない。

HCMV抗原検出:末梢血の再活性化は必ずしも消化管臓器での再活性化を反映しているわけではないことに注意する必要がある。

HCMVの組織診断:組織学的にinclusion bodyがあること。典型的なHCMV感染細胞は巨大化し広いhaloを持つcytomegalic inclusion bodyを呈することで、HCMVの増殖が活発であることを意味する。CMV特異的抗体やin situ DNA probeを用いることにより検出感度は向上する。

HCMVの核酸診断:微量なDNAの混入による偽陽性の可能性やプライマー結合部位に変異があると増幅できないなどの問題がある。一般的にIE蛋白のIE遺伝子が検出する。

診断法:gold standardは血中antigenemiaではない。潰瘍底からの生検で、CMVの存在の有無を確認することである。血中antigenemiaではHCMV抗原が検出されないことが多くあり、治療方法の決定に難渋する。UCの治療中にPSLの減量のみでantigenemia陽性から陰性になることが報告されている。また、antigenemia法はfalse-positiveが多く、末梢血球のDNAを用いたPCRによりHCMVを調べることを推奨する報告もある。

潰瘍の形態と粘膜生検におけるHCMV-DNA再活性化陽性所見との相関はない。ただし、潰瘍の有無、発赤と浮腫の存在はHCMVと相関する。

治療

ガンシクロビル投与によっていったん軽快するが、その後約1/3が再燃する。

粘膜の炎症を制御することが、HCMVの再活性化を抑制すると考えられている。