保坂内科消化器科のブログ

日々学んだことを備忘録として記します。

RA患者の呼吸器病変

 

①RAによる間質性肺病変:UIP, NSIP, DAD, OP

②気道病変:輪状披裂関節炎、気管支拡張症、濾胞性細気管支炎、閉塞性細気管支炎

③肺内結節病変:リウマチ結節、アミロイドーシス、肺癌、悪性リンパ腫

④胸膜病変:胸膜炎

⑤薬剤性:MTX、レフロノミド、生物学的製剤

感染症:一般細菌、抗酸菌、PCP

 

MTX肺炎の臨床像:頻度1-7%。MTX開始1年以内に多いが長期投与例にも発生。

MTX投与量と発症頻度の関連は不明。MTXに対する過敏反応。

臨床像:発熱、急性から亜急性の経過、低酸素血症、まだらな間質性陰影

鑑別:MTX肺炎、感染症、RA関連間質性肺炎、他の膠原病の併発(PM/DM)

   臨床症状、画像的にもPCPと鑑別が困難なことも。

治療:初期治療:入院下でMTX中止、抗菌薬投与(ST合剤含む)、PSL投与 

   β-D glucan、喀痰Grocott染色、喀痰PCR陽性などを参考に治療の適正化

 

PCP発症の危険因子:危険因子がある場合にはST合剤などを予防的に投与

           週6-8Tの少量投与でも予防の可能性あり

  ①65歳以上(HR3.77)②既存肺疾患あり(HR2.54) ③PSL≧6mg/d(HR 3.76)。

 

RA-ILD

予後不良因子:男性、喫煙、高齢、UIP型、広範囲肺病変、病理学的な線維化、%VC低値、活動性関節病変

 

RAにおける肺病変マネジメント

急性肺障害を見た時には、MTXやPCPなどを考慮してステロイドを早めに投与

Bio投与下のPCP発症率は0.1%であるが、致死率が高くPCP発症の予防を

IPは無症候性が多い。UIPの急性増悪は予後不良

IPの鑑別に、抗ARS抗体やANCAの測定も考慮

原因不明のCRP病変は、器質化肺炎の可能性も考慮

気道病変では複数回の抗酸菌の喀痰培養を

Bio投与下のRA患者出に呼吸器感染症は2-3%の頻度。高齢者、StageⅢ/Ⅳ、既存肺病変では呼吸器感染に注意。

身体機能障害が進展する前に加療

RAの治療としてステロイドを極力使用しない。短期間、低用量。

高齢糖尿病患者の血糖コントロールについて配慮すること

低血糖を防ぎながら、血糖の正常化を目指すことが目標

ただし、高齢者となると逆にどのくらいまで高血糖を許容するかも検討

この際に考慮すること

HbA1cが8.0%以上では認知症やうつ、転倒・骨折などが多い。

HbA1c8.5%以上で肺炎、尿路感染症などの感染症のリスクが高い

・HbA1c9%以上でHbA1c7~7.9%に比べHHSやDKAなどのリスクが2倍以上。

 

ILAEのてんかん分類(2017年)についての基本的な考え方

あらゆる発作は焦点起始発作(一側大脳半球内に始まる)と全般起始発作(両側半球に分布するネットワークに始まる)に分類される。起始に関して正しいと確信できなければ(確信度80%以上)、焦点不明に分類される。

 

焦点起始発作は、発作伝播経路によって臨床症状は容易に変化する。発作焦点の解剖学的基礎を想定できる起始症候で分類することとなった。従来の二次全般化発作という呼称は、両側化発作(bilateral)という呼び方に変化した。発作波の両側への波及や同期の様式は多様であり、一次的に出現する全般性発作と同じものかどうか不明であるためである。

 

全般性発作でも臨床的に左右非対称性な発作がありうる。焦点起始認識が不可能な急速な両側化発作がありうる。

 

意識については発作中に自己と周囲の状況を把握できているかどうかで判断する。この判定法によれば、後から本人に確認することが可能である。一部分でも意識の減衰や消失が認められれば、意識減損発作に分類され、全経過を通して認められなければ意識保持発作に分類される。

寄生虫疾患を疑ったときにおける糞便等の取り扱い

セロファンテープ法はここでは扱わない。

 

糞便は親指頭大の量を採取

排泄時に寄生虫が認められた場合、アルコール固定(ホルマリンはDNAを破壊)

塗沫法を少なくとも3回

・回虫卵、日本海裂頭条虫卵、アメーバ栄養型、ランブル鞭毛虫栄養型の検出

・採取後速やかに検査に供し、37度で観察(原虫が活動)

・原虫を疑っていればヨード染色


陰性であれば、集卵法(MGL法+ショ糖遠心沈殿浮遊法)

・MGL法:原虫のシスト、蠕虫卵の検出

・ショ糖遠心沈殿浮遊法:クリプトスポリジウムの検出


鈎虫や糞線虫の検出を目的として糞便を培養することがある

アメーバ赤痢については、DNA-PCR検査が登場(2018年保険適用外)

認知症外来における診方

 

ChE阻害薬は、ADLを上げる薬剤という認識がよい。施設入所を約2年間遅延。

ADにおける障害の典型例は、遅延再生低下→見当識障害→注意力障害→言語障害

MMSEを施行し、見当識障害、注意力障害、行動障害(Planning障害、Doing障害)の領域と、問題となっている行動障害と関連を考察する。そのうえで、薬剤を選択するとよい。患者や家族にどのような点が改善するのかを伝える。

見当識障害:ガランタミン

注意力障害(数字の逆唱など):リバスチグミン

Planning障害:メマンチン

Doing障害:ドネぺジル

 

外来フォロー:治療の目標は、介護者が継続して介護できる状態を維持することで施設入所を遅らせること。

 

①患者本人が行きたいと思う楽しい外来診療を心がける。服装、化粧のこと、デイサービスのことなどを話題に組み込む。

②施設入所が必要となりそうなことを示唆する徴候を見逃さない。

ADLの確認:風呂に入れているか、服を着替えられるか、トイレで用を足せるか、食事をとれているか、眠れているか、の5項目 +家族(介護者)と仲良くしているかをチェックする。家族が介護している結果、状態が安定していることを評価する。家族との好ましい関係作りをするために患者に「ありがとうといいましょう」と促す。

ChE阻害薬を内服していても、入浴→保清→着衣の順に能力が落ちてくる。

 

以上、慶応大学神経内科 吉崎崇仁先生の講演会から

 

禁煙行動の変容ステージ (ジェームズ・O・プロチャスカ)と支援の方法

  • 無関心期:禁煙する気はまったくない
  • 関心期 :禁煙する気はあるが一か月以内ではない
  • 準備期 :1か月以内に禁煙しようと考えている
  • 実行期 :禁煙して6ヶ月以内
  • 維持期 :禁煙して6ヶ月以上

無関心期

  • ①禁煙する気がなく医療者の助言に対して抵抗。 問題行動に対して「否認」や「合理化」などの 防御機制が働いている
  • ②問題行動に対する問題意識はない
  • 支援のポイント:いつか役に立つ情報提供

関心期

  • ①問題行動を起こしていることに気づいている。
  • ② 禁煙したいと思いながら、 喫煙継続にも価値を認め、 相反する感情をもち合わせている。 相反する感情・利益と不利益の対立 意志のバランスは 得 ≒ 損
  • 感情の両価性 アンビバレンス:やめたいでも やめたくない      (行動変容の際、誰もが体験する感情)
  • 支援のポイント:両価性の理解、動機の強化

準備期

  • ①禁煙を決意する
  • ②未来を見つめる
  • ③禁煙の具体的な方法を探す
  • 意志のバランスはわずかに 得 ≧ 損
  • 問題解決していく未来の自分を考えるようになり自己効力感が高まることで一気に行動を起こそうとする
  • 支援のポイント:自信の強化、具体的な禁煙方法

実行期

  • ①禁煙開始できる
  • ②不安が強く逆戻りしやすい
  • ③信頼関係を結んだ他者に不安を表出
  • 意志のバランスは 得 > 損
  • 行動を変えるために意図的に自分の生活を変えるが 不安や誘惑も多く逆戻りしやすい
  • 支援のポイント:自信の強化、賞賛           人間関係構築(仲間を作る)  

維持期

  • ①自力で禁煙を継続している
  • ②行動の利得を認識する 意志のバランスは 完全に 得 > 損
  • ③吸わないことが普通と感じるが 逆戻りのリスクは完全にはなくならない。
  • 支援のポイント:逆戻りの予防

     サポート力を提示して支援し続けていることを伝える

 

2018年の時点における免疫チェックポイント阻害薬についての問題点、不明な点

2018年の時点における免疫チェックポイント阻害薬についての問題点、不明な点

 

①小細胞肺がんは適応外である
②一次治療から使用できるものは限られている
③免疫疾患のある場合には使用できない
間質性肺炎では副作用で致死的になることもある
⑤約半数しか効かない。特にEGFR遺伝子変異陽性例では効果が低い
⑥至適投与期間がわかっていない
⑦殺細胞性抗がん剤や分子標的薬と併用するべきかわかっていない
⑦ダウンステージした際に手術をするべきかわかっていない
⑧異なる作用機序の免疫チェックポイント阻害薬と併用するべきかわかっていない