ILAEのてんかん分類(2017年)についての基本的な考え方
あらゆる発作は焦点起始発作(一側大脳半球内に始まる)と全般起始発作(両側半球に分布するネットワークに始まる)に分類される。起始に関して正しいと確信できなければ(確信度80%以上)、焦点不明に分類される。
焦点起始発作は、発作伝播経路によって臨床症状は容易に変化する。発作焦点の解剖学的基礎を想定できる起始症候で分類することとなった。従来の二次全般化発作という呼称は、両側化発作(bilateral)という呼び方に変化した。発作波の両側への波及や同期の様式は多様であり、一次的に出現する全般性発作と同じものかどうか不明であるためである。
全般性発作でも臨床的に左右非対称性な発作がありうる。焦点起始認識が不可能な急速な両側化発作がありうる。
意識については発作中に自己と周囲の状況を把握できているかどうかで判断する。この判定法によれば、後から本人に確認することが可能である。一部分でも意識の減衰や消失が認められれば、意識減損発作に分類され、全経過を通して認められなければ意識保持発作に分類される。
寄生虫疾患を疑ったときにおける糞便等の取り扱い
セロファンテープ法はここでは扱わない。
糞便は親指頭大の量を採取
排泄時に寄生虫が認められた場合、アルコール固定(ホルマリンはDNAを破壊)
塗沫法を少なくとも3回
・回虫卵、日本海裂頭条虫卵、アメーバ栄養型、ランブル鞭毛虫栄養型の検出
・採取後速やかに検査に供し、37度で観察(原虫が活動)
・原虫を疑っていればヨード染色
陰性であれば、集卵法(MGL法+ショ糖遠心沈殿浮遊法)
・MGL法:原虫のシスト、蠕虫卵の検出
・ショ糖遠心沈殿浮遊法:クリプトスポリジウムの検出
鈎虫や糞線虫の検出を目的として糞便を培養することがある
アメーバ赤痢については、DNA-PCR検査が登場(2018年保険適用外)
認知症外来における診方
ChE阻害薬は、ADLを上げる薬剤という認識がよい。施設入所を約2年間遅延。
ADにおける障害の典型例は、遅延再生低下→見当識障害→注意力障害→言語障害。
MMSEを施行し、見当識障害、注意力障害、行動障害(Planning障害、Doing障害)の領域と、問題となっている行動障害と関連を考察する。そのうえで、薬剤を選択するとよい。患者や家族にどのような点が改善するのかを伝える。
見当識障害:ガランタミン
注意力障害(数字の逆唱など):リバスチグミン
Planning障害:メマンチン
Doing障害:ドネぺジル
外来フォロー:治療の目標は、介護者が継続して介護できる状態を維持することで施設入所を遅らせること。
①患者本人が行きたいと思う楽しい外来診療を心がける。服装、化粧のこと、デイサービスのことなどを話題に組み込む。
②施設入所が必要となりそうなことを示唆する徴候を見逃さない。
ADLの確認:風呂に入れているか、服を着替えられるか、トイレで用を足せるか、食事をとれているか、眠れているか、の5項目 +家族(介護者)と仲良くしているかをチェックする。家族が介護している結果、状態が安定していることを評価する。家族との好ましい関係作りをするために患者に「ありがとうといいましょう」と促す。
ChE阻害薬を内服していても、入浴→保清→着衣の順に能力が落ちてくる。
以上、慶応大学神経内科 吉崎崇仁先生の講演会から
禁煙行動の変容ステージ (ジェームズ・O・プロチャスカ)と支援の方法
- 無関心期:禁煙する気はまったくない
- 関心期 :禁煙する気はあるが一か月以内ではない
- 準備期 :1か月以内に禁煙しようと考えている
- 実行期 :禁煙して6ヶ月以内
- 維持期 :禁煙して6ヶ月以上
無関心期
- ①禁煙する気がなく医療者の助言に対して抵抗。 問題行動に対して「否認」や「合理化」などの 防御機制が働いている
- ②問題行動に対する問題意識はない
- 支援のポイント:いつか役に立つ情報提供
関心期
- ①問題行動を起こしていることに気づいている。
- ② 禁煙したいと思いながら、 喫煙継続にも価値を認め、 相反する感情をもち合わせている。 相反する感情・利益と不利益の対立 意志のバランスは 得 ≒ 損
- 感情の両価性 アンビバレンス:やめたいでも やめたくない (行動変容の際、誰もが体験する感情)
- 支援のポイント:両価性の理解、動機の強化
準備期
- ①禁煙を決意する
- ②未来を見つめる
- ③禁煙の具体的な方法を探す
- 意志のバランスはわずかに 得 ≧ 損
- 問題解決していく未来の自分を考えるようになり自己効力感が高まることで一気に行動を起こそうとする
- 支援のポイント:自信の強化、具体的な禁煙方法
実行期
- ①禁煙開始できる
- ②不安が強く逆戻りしやすい
- ③信頼関係を結んだ他者に不安を表出
- 意志のバランスは 得 > 損
- 行動を変えるために意図的に自分の生活を変えるが 不安や誘惑も多く逆戻りしやすい
- 支援のポイント:自信の強化、賞賛 人間関係構築(仲間を作る)
維持期
- ①自力で禁煙を継続している
- ②行動の利得を認識する 意志のバランスは 完全に 得 > 損
- ③吸わないことが普通と感じるが 逆戻りのリスクは完全にはなくならない。
- 支援のポイント:逆戻りの予防
サポート力を提示して支援し続けていることを伝える
Functional dyspepsiaについて
ROMEⅣ基準が世界的に用いられているが、日本ではこの診断まで現実的に経過を見ることが難しい。日本の診断基準では期間については規定がないが1ヶ月以上持続するれば慢性的に見られると判断されるようである。以下RomeⅣ基準から。
6ヶ月以上前から症状があり、最近3ヶ月は下記の2つの基準を満たしている。
1.以下の1つが必須
食後のもたれ感
早期飽満感
心窩部痛
心窩部灼熱感
2.器質的疾患の除外
FDの症状は、膵臓や腸管(小腸、大腸)、腹膜の腫瘍でもディスペプシアは出現する。
FD症状を呈した患者の内、trypsinやelastase1の上昇の見る患者のうち、約半数でEUS上、早期慢性膵炎の所見を呈し、フオイパン投与に反応することが多いとの報告がある。膵酵素の上昇のない症例で早期慢性膵炎と診断されることは多くないという。
FDの機序
FDでは胃の運動不全、胃底部の弛緩不全、胃の伸展知覚過敏、食後に増強する伸展知覚過敏、胃や十二指腸の冷水や酸に対する知覚過敏が報告されている。この知覚過敏が末梢、中枢のどのレベルで起こっているのかについては明らかにされていない。
胃が爆状胃であった場合にはそうでない場合よりもFD症状が出現しやすいことがわかっている。
食事開始後の比較的早期の消化管運動能や消化管運動能を制御するgut hormone分泌にかかわっている十二指腸粘膜が、FDの病態形成に重要な役割を演じている。感染後FD患者の十二指腸粘膜に好酸球やマクロファージなどの免疫担当細胞の有意な遊走が認められたことがある。
たとえば、Norovirusは上部小腸に定着し、Giardia lambliaの定着部位と炎症の場は十二指腸や上部小腸であり、Salmonella sppやCampylobacter jejuniは終末回腸から大腸に定着し炎症を惹起することが知られている。また、一方で、腸管の炎症によって、消化管運動能に影響を及ぼすことは報告されているが、炎症の波及していない遠位の腸管の運動機能異常をもきたすことも知られている。さらに、十二指腸粘膜の透過性の亢進がFDの患者に認められることが報告されている。しかしながら、感染消失後も十二指腸粘膜の炎症が持続するという根本的な理由はよくわかっていない。
さらに最近では、胃に存在するghrelin、上部小腸に分布するCCK、小腸と大腸に広く分布するGLP-1、遠位小腸と大腸に広く分布するPYYなどと消化管運動との関与が注目されている。
治療
PPIでもH2RAでもプラセボと比較して20%程度の効果で制酸効果と関係はないとの報告があるが、現実的にPPIがもっとも多く処方されているだろう。
食後のもたれ感:PPI
早期飽満感 :PPI
心窩部痛 :PPI+アコチアミド、2ヶ月以上を投与してみる
心窩部灼熱感 :PPI+アコチアミド、2ヶ月以上を投与してみる
ピロリ菌がFDに関与しているのは14例に1例程度。メタアナリシスではNTT13であった。鳥肌状胃炎では、除菌によって症状が改善しやすいとの報告がある。
アコアチミドはプラセボ(奏効率30-40%)上乗せ効果は20%程度、胃もたれ、早期飽満感に対する効果の方が、心窩部痛症状改善効果よりも優れる。
六君子湯はプラセボに対して+10%程度の改善効果、エビデンスが十分とは言えない。
薬物効果は一応4週目に判定するが、この限りでないと思う。
抗うつ薬についてはタンドスピロン(セディール)の有用性が示されている。
催眠療法も有効である。
chronic instestinal psudo-obstruction (CIPO)について一般医レベルで覚えておくこと
基本的事項
1.腹部膨満、嘔気・嘔吐、腹痛等で入院するほどの重篤な腸閉塞症状が6か月以上
2.画像診断で消化管の拡張と鏡面像
3.消化管を閉塞する器質的な病変を認めない
シネMRIまたは消化管内圧検査で小腸を中心とする明瞭な運動異常が証明される。シネMRIで平均腸管拡張径40mm前後のものは小腸蠕動運動異常を伴う。
続発性CIPOの鑑別
1)消化管平滑筋関連疾患
膠原病関連:SSc、PM/DM、SLE、MCTD →膠原病検索
アミロイド―シス
エーラス・ダンロス(Ehlers-Danlos)症候群
2)消化管神経関連疾患
自律神経障害 →糖尿病性神経症、自己免疫性のものについては血液検査
筋緊張性ジストロフィー
EBV、VZV、ロタウイルスなどの感染後偽性腸閉塞 →病歴、血液検査など
3)内分泌性疾患 →血液検査
甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症、褐色細胞腫
4)代謝性疾患 →血液・尿検査
尿毒症、ポルフィリン症、重篤な電解質異常(K+、Ca2+、Mg2+)
5)その他
腸結核、クローン病、好酸球性腸炎
セリアック病 →抗グリアジン抗体、抗EMA抗体
傍腫瘍症候群(Paraneoplastic pseudo-obstruction) →全身検索が必要
腸間膜静脈血栓症 →腹部CT
放射線治療による副反応
血管浮腫
シャーガス(Chagas)病 →海外滞在歴の聴取
外傷、消化管術後、腹腔内炎症等に起因する麻痺性イレウス
6)薬剤性
抗うつ薬、抗不安薬
アントラキノン系下剤
フェノチアジン系
ビンカ・アルカロイド(Vinca alkaloid)
抗コリン薬、オピオイド
カルシウムチャンネル拮抗薬(べラパミルなど)